【先行連載】サバイバー!! 第9回
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【先行連載】サバイバー!! 第9回

角川つばさ文庫で8月発売の新シリーズ「サバイバー!!」を一足早く公開中!

「う、うてな!?」
 ヤバイ! こんな高さから落ちたら、首の骨を折っちゃう!
 あたしは彼女を受けとめようと、猛ダッシュする——! けど、
「どけ!」
 肩をつかまれ、思いっきり後ろに引かれた!
 すぐ横を、ダレかがすさまじいイキオイで駆けぬけていくっ!
 あたしは尻もちついて、それでもすぐに、バッと前を見やった。
ドッ!
 一瞬のうちにあたしを追いぬいたそのヒトは、バネみたいにヒザを沈ませて重力を逃がし、全身でうてなのカラダを受けとめた!
 砂ぼこりが大きく舞いあがる。
「……ビ、ビックリしたぁっ」
 茶色いケムリの中から、うてなの声!
 ぶじだった!?
 二階の高さを頭から落っこちたのに、キセキだよ……!
 きっとプロのサバイバーが救けてくれたんだっ!
「うてな、ケガは!? ごめん!」
 あたしは腰のぬけたまま、彼女のところへ這いよる。
「うん、だいじょぶ……っ」
 うてなを抱きとめた人は、彼女をぺいっと放りだした。
「あとちょっとって気のぬけた時は、事故を起こしやすい。訓練につき合わせるなら、自分の限界だけじゃなく、相手のようすも気にかけろ」
 ぎろり、あたしに向けられた、キビしい目。
 ——涼馬くんだ。
 まさか同級生が救けてくれたのかって驚くと同時に、身がすくんだ。
 今までで、イチバン怒ってる目……!
 そ、そりゃ、うてなを大ケガさせるとこだったんだから、当然だ。
「……ごめんなさい。あの、うてなを救けてくれて、ありがとう」
「あんたは。ケガ」
 彼はあたしの全身をじろりと確かめて、いきなり手をつかんできた。
 血豆のつぶれた、ばんそうこうだらけの手を見られてしまった。
 こんなの、あたしの不器用のショウコみたいで恥ずかしい。
 パッとひっこめて隠すと、彼は、自分のほうがケガしたみたいに眉をひそめた。
「ひどいな。ふつうクラスのほうがラクできるぜ。こんなふうに痛めることもない」
 しかられるってカクゴしてたあたしは、ぱちぱち目をしばたたく。
「……ラクをしたいなんて、思ってないよ。S組のコたちは、だれも思ってないでしょ?」
 だって、あたしを救けてくれたサバイバーたちが、簡単にスゴイ人になったなんて思えないもの。
 ノドカ兄だって、きっとそうだったハズだ。
 そして——涼馬くんだって。
 この人の手のひらのカタさを、あたしは知ってる。
 正面からジッと見つめかえすと、
「…………あっそ」
 涼馬くんは息をつき、投げだしたカバンを取りにもどっちゃった。
 彼の歩いていく先に、唯ちゃんや健太郎くんたちが待ってる。
 S組のなかでも、成績ポイントの高いコたちの集団だ。
 サバサバしてカッコイイ唯ちゃんは、アタッカー授業でいつも涼馬くんにホメられてる。
 ほんわかムードの健太郎くんは、ディフェンダー授業で、うてなに並ぶ実力者。
 そんなみんなが、こっちを気まずい顔でながめてる。
 けど、あたしと目が合ったら、取りつくろうように手をふってくれた。
「これから寮の食堂で、『一週間おつかれパーティ』するんだぁー! 二人も来るっ?」
「六年のナオトさんと千早希さんも出てくれるって! ハイ・ウォールのコツとか、教えてもらえるかもよっ。オレたちじゃ、うまく説明してあげらんないしさー!」
「さそってくれてありがとーっ! またのチャンスに!」
 パーティって気分にはなれなくて、両手を合わせてごまかしちゃった。
 アドバイス……は、涼馬くんからいっぱいもらってるんだけどね。
 それでも上達しない、ダメダメなあたし。
 だけどみんなは、そんなあたしをこまりつつも仲間に入れようとしてくれる。
 優等生たちらしい、オトナな優しさだ。
 けど、それが今のあたしには、むしろ痛いかもしんない。
 ほんとに〝担当ナシ〟だなって、レベルのちがいに情けなくなるっていうか……。
「うてなは行ってきたら?」
「いいよぉ。ボクはマメちゃんといるー」
 涼馬くんと合流したみんなは、わきあいあいと校門を出ていく。
 立ちあがりながら、あたしは首が下をむいちゃう。
「でも、涼馬くんの言うとおりだよね。さっきはムリさせちゃってゴメンね」
「ううん、ボクがウッカリしたせいだよ。でもリョーマさぁっ。マメちゃんだってボクを救けようとしてたのに、わざわざ尻もちつかせるコトないじゃん。あいつ、ほんとにマメちゃん限定ツンツンだよなー!」
 うてながプンスカ、ほっぺたをふくらませる。
「う~~ん。涼馬の名誉のために、いちおうフォローしといてあげようかな?」
 いきなりの、背後からの声。
 ふり返ったら、楽さんと七海さんがすぐソコに立ってた。


 二人も寮に帰るところだったみたいだ。
 楽さんはほっぺたをかき、涼馬くんの消えたほうに目をやる。
「さっきのね。マメちゃんだったら、二人とも大ケガだったよ。落ちてくる人間を受けとめるって、超むずかしいワザなの。だから巻きこまれないように、確実に遠ざけてあげたんじゃない?」
 思いもよらない言葉に、あたしは目をしばたたいた。
「じゃあ、涼馬くん、あたしのことも守ってくれて……?」
「ボクも、ただのイヤがらせだと思ってた」
「ハハッ。くっそマジメに『理想のサバイバー』をやってる涼馬だよ? わざと乱暴はしないなー」
 あたしはうてなと顔を見合わせる。
 ひどいカンちがいをした自分に、カァッとほっぺたが熱くなった。
「でも、あんなに冷ややかな涼馬さんは、初めて見ますね」
「たしかに。マメちゃんってば、いったい涼馬に何しちゃったの」
 やっぱり去年からいっしょの二人も、ヘンって思うような態度なんだ。
 ますます肩が落ちちゃうよ。
「あたしの成績がサイテーだからですかね……。現場で〝担当ナシ〟に足ひっぱられたら、みんなの命にかかわるって言ってましたもん」
「あー、なるほど。そのうち実地訓練もあるからねぇ」
 ナットク顔でうなずいた楽さんに、あたしは逆にぽかんとする。
「実地訓練とは——、一年に何回か、とつぜん行われる訓練で、ボソボソボソ……」
 七海さんが説明をはじめてくれたけど、ぐぬっ、ぜんぜん聞きとれない!
 あたしは彼女のメガホンを、サッと口にあてた。
「予告なしで、いきなりサバイバルな場所に放りだされるんです」
 やたらとクッキリ聞こえた言葉が、めちゃくちゃ不穏だったぞ!?
 ——でも、もしかして、その訓練って……。
「そうそう。くわしいコトはヒミツだけどね。なんもない砂漠とか、コンテナ船で海を漂流とか。一番キツかったのは、廃鉱山の火災現場。学校で現場を買いとって、ほんとに火をつけるからね」
「ほ、ほんとの火災ですか!? その中に放りだされる……って、すごくハードな……」
「そんなの、うっかりしたら死んじゃうじゃん」
 思わず声がふるえるあたしたちに、二人とも平気な顔でうなずく。
「サバイバーが、いきなりのサバイバル状況に対応できなかったら、話になんないからね」
「あなたたちもS組に入るとき、約束の書類を書いたはずです。『命を学校にあずける』『S組にかかわることはヒミツにする』などなど……」
 うてなが青ざめた。
 たしかに保護者といっしょに直筆でサインしたの、あたしも覚えてる。
 もし学校で死んでもモンク言うなってイミ——? って、びっくりしたんだ。
「実地訓練では、ケガ人はたくさん出ますし、過去にはゆくえ不明になった生徒もいると聞きます。命がけですから、〝担当ナシ〟さんとチームを組みたい人は、正直、いないのではと」
「しかもその時のチームの成績は、プロになるまでついて回ってくるんだよね。そりゃ、チームポイント下げられんのは、ぼくもイヤっちゃあイヤかな。というかイヤです」
 七海さんに続き、楽さんまでも、追いうちのヨーシャないお言葉だっ!
「だけどあたし、どうしても、サバイバーにならなきゃで」
 あたしはゆるゆるとメガホンを下ろした。
 服の下、だいじなホイッスルに手をあてる。
 これをくれたノドカ兄とは、もう半年も会えてない。
 しっかりしなきゃって、がんばってはいるけど。
 心にはぽっかり……大きな穴があいたままなんだ。
 今わたしとノドカ兄をつないでくれる場所は、S組だけしかない。
 だからこそ、どうしても彼とのヤクソクを守りたい。
 つぎ会えたときに、「ちゃんとサバイバーめざしてるよ!」って、胸をはれる自分でいたいから。
 ——でも。
 ほかのコたちには、あたしの存在がメーワクだってのは、本当だよね。
 一生懸命やってもトクイがないコは、夢をあきらめるしかない……のかな。
 ギュッとこぶしをにぎりこむ。
「先生たちも、マメちゃんは実地訓練に入れないと思うけどね。ヘンなうわさも流れてるし」
「うわさ? 実地訓練のことでですか? それってどんな」
「アホらしいようなのだよ。ま、ケガしないように、自主トレもほどほどにね」
 センパイたちは、ひらひら手をふって歩みさっていく。
 おつかれさまでしたって頭を下げ、あたしは二人の背中をじっと見おくった。
 ……くやしいなぁ。
 みんなみたいに、トクイのない自分がくやしい。
「マメちゃんっ!」
ばむっ!
 うてなに思いっきり背中をたたかれ、ゲェホッとむせる。
「まだS組が始まったばっかじゃん! チームもボクと組めばいいんだし。もしも実地訓練にあたっても、ボクがディフェンダーとして、マメちゃんを守ってみせるよ!」
 ねっ、とのぞきこんでくる彼女の、心配そうな瞳。
「ありがと、うてな」
 あたしはキュッと、ふくふくホッペを抱きよせる。
 うてなをアテにするなんて、サバイバーとしてナシだけど。
 でも実地訓練までには、きっといっぱい、自分を成長させるチャンスがあるはずだ。
 胸のホイッスルを、しっかりとにぎりこむ。
 ノドカ兄も「マメなら、なんにだってなれる」って信じてくれた。
 そばにいなくたって、あの言葉はずうっと覚えてるよ。ノドカ兄。
 ——あたしは、双葉マメ。
 今は、指でつまめちゃうような、つまんないタダの豆でも。
 あきらめずに水をあげつづけたら、ぐんぐん伸びて、天までとどく豆の木になれる——ハズッ!
 まずは自分で自分を信じてみよう!
 だけど今日はもう、涼馬くんの忠告どおり、ハイ・ウォールの訓練はやめとかなきゃな。
「じゃ、授業の復習しよっか!」
「じゃ、帰ろっか!」
 同時に正反対のことを言っちゃったあたしたち。
 二人して砂ぼこりまみれの顔を見合わせ。
 ブハッとふきだして笑いあった。



 今日は待ちに待った、二泊三日の遠足合宿!
 ず~~っと、勉強&訓練だけの日々をすごしてきて。
 山でハイキングなんて、テンション上がっちゃうよねっ!
「ええと、『おおぜいの負傷者を、いっぺんに救助するとき。まずはダレから手当てするかを、選んで決めましょう』」
 しかし〝担当ナシ〟はバスに座るなり、すかさず勉強するのだっ。
 あたしはこの一か月でいよいよ、クラスメイトから、「マメちゃんなら、このくらいデキてればいいよ。がんばりすぎも良くないよ」なんて、なぐさめられるようになってしまった!
 このままじゃダメだっ!
「お。それ、選別(トリアージ)のトコ?」
 教科書を読みあげてると、となりの席から、うてなが顔をよせてきた。
「それって、ケガ人がいっぱいの時に、歩けるかみてー、呼吸あるかみてー、脈とってーって、手当ての順番を決めるヤツだよね」
「さすがうてな! ばっちりだね」
「えへへー。ディフェンダーのことだからさ。けど他のはホンットだめ。あのアタッカー鬼リーダー、さわやかに、ちょースパルタだしさぁ。もう、あいつの授業うけたくなぁーい!」
 うてなが嘆きながら、キャラメルを教科書にのっけてくれた。
「ありがと、うてな」
 ぱくっと食べちゃったあとで、はたと気がついた。
「えっ。なんでオカシ持ってんのっ? お弁当もオカシも、配られるから持ってきちゃダメって、遠足のしおりに——、」
「これでマメちゃんも同罪だ~っ」
 食いしん坊のうてなは、ひゃっひゃっひゃとワルい顔で笑う。
「お、居のこりコンビも三号車か。ヨロシクね」
 ヒョイッとのぞきこんできた、にこにこ笑顔!
 楽さんっ!!
「「おひゃよンゴざいまンゴッ」」
 キャラメルを飲みこみそうになっちゃって、二人してセキこむ!
「な、なになに。そんなにビックリするほど、ぼくがカッコよかった?」
 ジョーダン(?)を言いながら、楽さんは奥の席へ。
 そのすぐあとに、気配のないお人形さん——じゃないや、七海さんが続く。
「なにやら、あまい香りがしますね……」
   ぎくうっ!
 あたしたちは身をすくめ、超高速で口の中のキャラメルを溶かす。「あれ。七海さんも楽さんも三号車? ミニバスでリーダーがそろうって、すごい確率ですね」
 足どり軽く中に入ってきたのは……っ、風見涼馬!
 ほかの生徒たちから、ワッと喜びの歓声があがる。
 五年はうてなとあたし、唯(ゆい)ちゃんと健(けん)太(た)郎(ろう)くん、涼馬くん。給食班のメンバーだ。
 あとは楽さんたち六年が四人。
 以上、生徒九人でこのミニバスはみっしり満席だ。
(ただし、でっかい筋肉先生が、一番まえの座席をふたつ占領してる)
「〝担当ナシ〟も来るのかよ。今すぐ帰れ」
「いやですー」
 今朝もツンツンな涼馬くんに、あたしはげぇぇって顔を、さらにしかめて返す。
 すると彼もあたしを冷たーく見下ろして、手のひらを突きだしてきた。
「違反キャラメル、没収」
「「うええええっ」」
 どうしてバレてんのっ!
 縮みあがるあたしたちに、涼馬くんはシラッとして、キャラメルの箱(はこ)をかっさらう。
「においで分かんだよ。楽さんたちは目をつぶってくれただけだ」
 と、前の席から、先生ののぶとい声。
「双葉マメと空知うてな、成績ポイントからマイナス1点なァー」
「ギャ! 先生っ、あたし30ポイントしかなかったんですけどっ。今、あと何点ですか!?」
「ボクのもっ!」
「双葉マメは、のこり20ポイントきってるぞ。空知うてなは、マイナスは多いが、ディフェンダー訓練でポイント回復してたからな。70から変(か)わってない」
「ワァ……」
 絶句するあたしに、涼馬くんはあきれたタメ息だ。
「〝担当ナシ〟のほうは、いよいよこの遠足で、S組からサヨナラだろうな」
 うしろの席へ歩いてく彼を、あたしはふるえながら見おくる。
 ちょうど、パチッと健太郎くんと目が合った。
 と思ったら、彼はニガ笑いで、そそっと前に視線をそらす。
 だよね。コメントしづらい気持ち、わかりマス……。
「え、え~とさ、五年生。『強勇学園、ナゾの怪事件』って知ってる?」
「なんですかソレッ。おもしろそう!」
「よーし、オレが教えてあげよう。実地訓練に出た、未知の危険生物のはなし!」
 めんどうみのいいセンパイ、千早希さんとナオトさんが、あわててみんなを盛りあげてくれる。
 危険生物? 未知のって、エイリアンとかUMAみたいな?
 みんなは、たぶん楽さんが言ってた「ヘンなうわさ」にキョーミしんしんだけど。
 あたしは遠足どころじゃない気分になっちゃった。
 はぁぁ……っと息をつき、教科書にべしょっと顔をうつぶせた。

 あれ、あたし寝てた?
 目を開けたとたん、こめかみがズキッと痛んだ。
 お昼のお弁当をバスで食べたあと、いつの間にか、ぐっすり眠りこけてたみたいだ。
 あたしの肩にもたれかかってるうてなが、ぷうぷう寝息をたててる。
 バスの中はぶきみなほど静かだ。
 もう現地に到着したのかな。
 立ちあがって、みんなを見まわしてみたら、
「い、いないっ!?」
 運転手さんも、前の席にどかっと座ってた筋肉先生も——、
 涼馬くんたちリーダーも、まるっといない!
 変だ。ざわっと両うでにトリハダが立つ。
 あたしはハジかれたように席を立ち、バスの外へとび出した。

「……なんだこれ」
 砂浜にうちよせる白い波。そよそよとポニーテールをゆらす、潮風。
 上空に円をえがく、とんびの影。
 あたしはバッとしゃがんで、波うちぎわの濡れた砂を手でにぎる。
 本物だ。夢じゃない。
 なんで海っ!?

この物語の続きは、『サバイバー(1)いじわるエースと初ミッション!』ためし読みボタンから読めるよ。
まさかすぎる展開に、マメたち9人の命運や――いかにっ!!?

挿絵(さしえ)がたくさん載っている、1巻の特集ページも、もうすぐ公開予定!
上のページから見られる予定だよ。
本は8月6日(金)発売予定。
たのしみに待っていてね!
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。

☆感想が届いているよ!
すっごく面白いです! 次が気になる終わり方なので 楽しみだし飽きません!
こういう系のお話を始めて読んだけど、思った以上にすごく面白かった
ウデ立てふせをしながら『サバイバルの5か条』を言うなんて…マメちゃんすごいーー!!
マメちゃんが自主練とかをしていて頑張れって応援したくなった。
出来なくても、諦めずに頑張っている所が好きです!!!

いつも感想うれしいです♪ たくさん届いていてのせられなかった感想も、ぜんぶ読ませてもらっています。
先行おためし読みをさいごまでたのしんでくれて、ありがとうございました!
ますますハラハラドキドキな展開がまちうけるこの続きの物語、本で読んでみてくださいね☆(担)

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