子どもの発達お悩み相談室 第9回 「いつも動き回ってケガばかり。こんなに落ち着きないなんて変なのでは?」
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子どもの発達お悩み相談室 第9回 「いつも動き回ってケガばかり。こんなに落ち着きないなんて変なのでは?」

みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q9.いつも動き回ってケガばかり。こんなに落ち着きないなんて変なのでは?

■家族構成
相談者:げんなり母さん(相談したい子の母、30代前半)、夫(30代前半)、長女(6歳)、長男(相談したい子、3歳)

■ご相談
 息子は1歳で歩きだしてからというもの、チャレンジ精神旺盛で、どこまでもトコトコ歩いていく子でした。3歳になり、車の通る道路に突然飛びだしたり、段差があれば迷わず飛び降りたりと、本当に外では一瞬も目を離せませんでした。

 しかも私から見て、そんな小さな子が飛び降りるのは無理だろう、というようなところでも飛ぶので、生傷が絶えません。その度に、「なんでそんなに危ないことするの!」と怒るのですが、本人にはいっこうに届いていないようです。さすがにそれだけ痛い思いをすれば、いい加減学習するだろう、と思うのですが、ひとしきり泣いたら、また動きだします。「ちょっとくらいおとなしくしておくれよー」、とげんなりしてしまいます。

 3つ年上のお姉ちゃんは、全くそんなことはなかったので、どうしていいものやらわかりません。「男の子は元気でいいわね」とママ友に言われますが、私自身、元気すぎるというか、怖いもの知らずの息子を追いかけ回すのに毎日ヘトヘトです。 

 いったいこんな生活がいつまで続くのでしょうか? いつもニコニコと人なつっこい笑顔で、親バカですが、かわいいなあ、と思うこともあります。それでもやはり衝動的に走りだしたりすると、「コラ待てー!」となってしまい、息子の誕生以降、優雅なティータイムを楽しんだことはありません。こんなに落ち着きなく動き回るのは、ちょっと変なんじゃないかと思っています。3歳児検診の時もいつも動いていて、今度、発達の検査を受けることになっています。

A.専門家の回答

衝動的に動くのは、脳内の神経伝達物質の異常によるもの。
しかりつづけると自己肯定感を下げてしまいます。
 息子さんはとても好奇心が強いのですね。段差があれば跳んでみたくなり、大きな岩があれば登りたくなる。活発で明るいお子さんなのでしょう。ただ、ママとしては、ケガをしないかといつもヒヤヒヤして、少しも目が離せず大変だろうと思います。

 ただ、「なんでそんなことするの!」と怒っても、息子さんは答えられないと思います。だって、きっと、息子さんは考えてそうしているわけではなく、興味をもつと、考える間もなくすぐに身体が動いてしまっているからです。

集中しすぎて他のことが見えないのかも
 もしかすると息子さんにはADHD(注意欠如・多動症)のような特性があるのかもしれません。ADHDのお子さんは、注意のコントロールに問題があり、興味のあるものへと身体が勝手に動いてしまい、他のものには注意を向けることができないため、事故につながる場合があります。

 つまり、周りのことにも目を配りながら、安全に目的地に向かう、ということが苦手なのです。生まれつき、脳内で情報を伝える働きをする「神経伝達物質」に異常があると考えられています。3歳では、よく動くお子さんもそれなりにいますし、成長するにつれ行動の調整ができるようになることも多いですが、息子さんはその傾向がある、と言えるでしょう。なお、ADHDの診断は、小学校入学後、問題が明らかになる9歳頃になされることが多いようです。

 いつもよく動いている、多動特性の強いお子さんが、気になるものを見つけるとすぐに走りだして、手前にある鉄棒に気づかず、そのまま突っ込んでいっておでこにゴッツンコ、大きなたんこぶができた、というシーンを見たことがあります。お母さんは、真っ青になっておられました。

 これは確かに、鉄棒に気づかない不注意ではありますが、逆に、鉄棒も目に入らないほど、その向こうにあるものが気になり、そこに意識が集中してしまった「過集中」とみることもできます。一瞬にして高い集中力を持つことができる能力は、いずれ大きなことを成し遂げる原動力になるかもしれませんよ!

動くな、と言うより、安全な場所で動いた方がいい
 さらに、すぐに動きだす敏捷性は、何かスポーツで発揮されれば、すばらしい選手になれるかもしれません。実際に、アメリカ代表として5回のオリンピックで通算28個ものメダルを獲得した水泳選手のマイケル・フェルプスさんや、リオオリンピックで5個のメダルを獲得した体操選手のシモーネ・バイルズさんはADHDであることを公表されています。

 一般的に、運動が体にいいことはよく知られていて、定期的な運動を続けるとADHDの衝動性が抑えられ、認知機能がアップする、という研究報告も多数あります。例えば2014年ミシガン州立大学アラン・スミス教授らは、幼稚園児から小学2年生までの約200名(定型発達児100名、ADHD100名)に12週間、登校・登園前に30分ほどの有酸素運動を行わせたところ、全ての子供の算数や国語の点数がアップ、さらにADHDの子供では、定型児よりはるかに脳機能が改善されたことを報告しています。同教授はまた、小学生に8週間、毎日30分程度の運動をさせたところ、ADHDの症状が和らいだことも報告しています。

 これは、体を動かすことで、行動をコントロールする前頭前野の働きが良くなり、ADHDの治療薬を服用した時と同様の効果をもたらすからだ、と考えられています。

怒られてばかりの子は思春期に問題行動が現れることが多い
 とはいえ、小さい頃からそういうことが多いと、親御さんは、お子さんを事故にあわせてはいけないと、いつも注意するか怒ってばかりいるという状況になりがちです。回遊魚母さんも、毎日ヘトヘトになりながら追いかけていると、自分の時間はなくなり、つい怒ってしまうのも無理はありません。

 ですが、小さい頃からずっと怒られ続けていると、「自分はいつも怒られてばかりのダメな人間だ」と自信をなくしてしまい自己肯定感をそこなってしまいます。実は、多動性・衝動性の強いお子さんで、後々いちばんの問題行動となって出てくるのは、この、「怒られ続けることによる弊害」に起因するものなのです。お子さん自身も頭ではわかっていて、うまくやりたいのに考える前に手が出て行動してしまう、コントロールがきかないことをもどかしく思っているのです。

 難しいとは思いますができるだけ、怒るよりも、少しだけがんばればできる目標を立てて、それを着実に成功させてほめる、という方向で子育てしていただければと思います。

 個人差はありますが、多動性・衝動性は、「これはやっちゃいけなかったんだ」ということがわかるようになる4歳くらいになると、少しずつおさまってきます。それまでは、危険な場所を避ける、なるべく目を離さないなど家族全員でサポートするようにしましょう。

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久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。

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