聞かせて!けいたろう 第1回 絵本解体新書『フンころがさず』
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聞かせて!けいたろう 第1回 絵本解体新書『フンころがさず』

読み聞かせのトップランナー、聞かせ屋。けいたろうさんが、絵本に関するアレやコレを語ります!第一回は『フンころがさず』を、けいたろうさんがじっくり読み解きます。

良い絵本って、何が良いのでしょう? 今回じっくり見つめてみたいのは……。

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フンころがさず
絵:高畠 純 作:大塚 健太

これ、衝撃的ですよね。「フンコロガシ」が絵本の主役になるなんて。タイトルが無かったら、この生物が何者なのか確信が持てません(笑)。そんな彼を主役に据えるとは……なんてアクロバティックなんだ!!

……それでは! めくってみましょう。

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ぼくは フンを ころがすのが だいすきな フンころがし。
うんうん。それは知っている。むしろ、それしか知らない。

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“まわりのみんな”に「フンを ころがすなんて へんなやつだな」と言われた事が物語の発端。同じ虫だけでなく、犬も鳥も来ているのが楽しい所。この絶妙な上から視点、スゴいですよね。

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フンを ころがすなんて もう やめてやる!
フンコロガシ、大きく出ましたね(笑)。心なしか、絵も大きいです。主張の強さが伺えます。
このお話を考えた大塚健太さん、すごいアイデアですね。「フンコロガシがフンを転がす事を辞める」彼にとっては一大事。これだけで十分、一冊の絵本になりますよね。限り無く絵本が出ている現代に新しいお話を作るのは、本当に大変なのです。

こうして彼は、自分探しと改名の旅に出ます。

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絵としては、主役がページの中央あたりに描けるように、地面で底上げをしているはず。文章は色を変えて、土の中へ!お見事です。そして、おそらく数時間後に出た結論がこちら↓

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そうだ! フンを ころがさないんだから 「フンころがさず」これで いこう!
『フンころがさず』素晴らしい結論ですよね(笑)
そして、高畠純さんの絵。背景も素晴らしいです。オレンジ一色が気持ち良い。

「フンころがさず」になったあとのこの背景。広がる青空が彼の心を表していますよね。

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絵にも「間」があるように感じます。本当に清々しい。
良い絵本には、こういうページが入るような気がします。
しばらく開いていたくなる、味わい場面です。

けれど!次の場面で早くも凹む彼(笑)

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この絵、伝わりますよね〜。天と地が逆転してモノクロに。
空が狭い!『フンころがさず』の心の中を描いたような閉塞感。
そしてキツツキに出会い、[フンを転がす事]について、思いを巡らせます。

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この場面では豆つぶのように描かれた『フンころがさず』。
キツツキが大きな存在に見えますね。

フンコロガシが、フンをころがさないことに決めたときいて、キツツキは「ハハハ! なにを いっているんだよ。 へんなやつだな」と言います。

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キツツキの言う「へんなやつ」は、はじめに“みんな”に言われた「へんなやつ」とは意味が違います。

僕、この場面が一番好きなのです。無駄の無いセリフと、シルエット。

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キツツキも、過去に色々あったのだろうなぁ(笑)。そしてここから数場面、主役が「フンころがし」に戻っていく姿が描かれて……。

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自然な光景に。
『フンころがし』の背景には再び青空が描かれます。
そして、この絵本で初めて描かれているのが太陽。これは言わずもがな。さすがです。

大塚健太さんの輝くアイデアと、高畠純さんの熟練の技、良い絵本が出ましたね〜。素敵です。
フンコロガシが主役!って、勇気のいる絵本づくりだったことと思います。主役をキツツキにして「キツツかず」というアイデアも、出たのではないかと思うのです。
でも、フンコロガシで行った(笑)! 見事ですよね。タイトルだけで内容が読める、そして読んでみたくなるって、大事だと思うのです。

このコラムでは皆さんに、僕の勝手な見解に付き合って頂きました。今更お伝えしますが、僕はこの絵本の作者ではありません。見解は思い違いだったりするかもしれません。本来、絵本には解説も見解も必要無いと、僕は考えます。絵本を手に取った皆さんがそれぞれの思いを巡らせて、楽しんでもらえば良いと。
でも、大人って忙しい。絵本を手に取ってもなかなか、じっくり味わえないのです。文章だけサラッと読んで、良いお話だかそうでないのか、判断しがちです。子どもは、そうではないようです。じっくりと絵を味わって、何度も何度も「よんで!」って言う。
「大人にも絵本をじっくり味わってもらえるきっかけになれば」と思い、僕はこの文章を書いています。
お付き合い頂き、ありがとうございました!
絵本って、本当に良いものですね。

最後に、表紙(と裏表紙)の裏にある[見返し]という部分に注目してみましょう。
始めにめくる、表紙の側の見返しは……

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そして、裏表紙側の見返しは……

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これもニクい演出!
同じ模様(絵)なのですよ。でも、後者の方が明るいですよね。色を反転しているようです。絵本には、こんな楽しみもあります。頭の先から、足の先まで絵本を味わってくださいね。

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