怪盗レッド THE FIRST 誰のために、戦うか? - 5.ダブルデートの始まり
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怪盗レッド THE FIRST 誰のために、戦うか? - 5.ダブルデートの始まり

累計125万部!つばさ文庫の超ヒットシリーズ「怪盗レッド」の最新書き下ろし単行本!『怪盗レッド THE FIRST 誰のために、戦うか?』のためし読み連載。

5.ダブルデートの始まり

 日曜日。
 待ち合わせの最寄り駅前で、僕は待っていた。
 朝、学校にいくのと同じように、かなり早めに到着していた。
 服は、少し悩んだけれど、そもそも悩むほど持っていないことに気づいて、一番無難そうなものを選んだ。とくに変には思われないと思う。
 少し待っていると、黄瀬さんが小走りにやってくる。
「おはよう。やっぱり、藤白くんは早いね」
「おはよう。まだ、ほかにはきてないよ。集合まで15分もあるし」
 黄瀬さんが、キョロキョロとまわりを見るので、そう伝える。
 今日の黄瀬さんは、デニムのズボンに、フランス語のロゴ入りのクリーム色のTシャツの上から、淡いオレンジ色のパーカーを着ている。
 黄瀬さんの私服姿を見るのははじめてで、新鮮だけど、活動的な彼女に、よく似合ってる。
 黄瀬さんがきてから、しばらくして、
「あら。2人とも早いのね。これでも少し早めにきたつもりなのに……」
 緑谷先輩がやってくる。
「お、おはようございます」
「おはようございます、緑谷先輩」
 僕はつっかえながら、黄瀬さんはすらすらと、あいさつする。
「おはようございます。翼くんは、まだなのね?」
「はい。翼先輩はまだきてないです」
 翼先輩も、時間にルーズなほうではないから、遅れることはないと思うけど。
 それよりも、緑谷先輩の服装だ。
 すごく新鮮でおとなっぽい。
 カーキ色のワンピースに、白のカーディガンを羽織っている。
 制服姿とはまた違う優雅な雰囲気に、僕はまっすぐに緑谷先輩を見られなくて、微妙に視線をそらしながら話した。
 幸い、緑谷先輩が黄瀬さんと話を始めたので、ほっとする。
 翼先輩がきたのは、それから10分後。
 待ち合わせ時間ギリギリだった。
「おれが最後か。みんな早いな」
 翼先輩は、自分以外がそろっていることが意外そうに、僕たちを見る。
 翼先輩の服装は……まあいつもどおり、ラフなかっこうだからいいか。
 片手に、遊園地にいくにしては大きめのバッグを持っているけど。
「翼くんが、ギリギリすぎるのよ」
 緑谷先輩が、ジロリと翼先輩を見る。
「待ち合わせ時間には、間に合っただろう。それにしても……緑谷。今日はやけに、服に気合いが入っ……いててっ」
 翼先輩が言葉をつづける前に、緑谷先輩が翼先輩の耳をひっぱる。
「よけいなことは言わない。いい?」
 緑谷先輩が、翼先輩を迫力ある顔でにらむと、翼先輩が、こくこくとうなずく。
 どうも、この2人の力関係は、緑谷先輩のほうが上らしい。
 なんか意外な気もするけど、翼先輩のふだんの自由さから、生徒会役員の緑谷先輩にだいぶ迷惑をかけているからだろうかと推測する。
 それで、緑谷先輩に頭が上がらないのかもしれない。
 ふと、となりを見ると、黄瀬さんの表情が暗い。
「黄瀬さん、どうかした? 体調が悪いとか?」
「ううん、そういうんじゃないの。……あの2人、仲がいいなぁと思って」
 黄瀬さんはそう言って、翼先輩と緑谷先輩のほうに目をやる。
 たしかに、2人は仲がいい。
 僕も、本当はもやもやしたものを感じていたのだけど、表情には出さなかった。
「遊びにいくんだから、そんな暗い顔してたら、もったいないよ」
 せっかく勇気を出して誘ったのに、どんよりした雰囲気になるのはよくない。
「そうだね。せっかく、紅月先輩を誘えたんだから、楽しまなくっちゃね!」
 空元気かもしれないけど、黄瀬さんに笑顔がもどる。
 見ると、緑谷先輩が、翼先輩の耳をさらにひっぱって、なにか小声で話している。
「いや……おれは……しら……」
 翼先輩の言葉が、とぎれとぎれにきこえるが、意味はとれない。
 いったい、なにをひそひそ話してるんだろうか。
 2人の距離の近さに、やはり胸がチクチクするというか……。
「じゃあ、いきましょうか」
 緑谷先輩が翼先輩の耳をはなして、僕と黄瀬さんに言う。
 駅の改札をとおり、電車に乗りこむ。
 予定どおり、遊園地に着けそうだ。
 いまさらだけど、こういうのは「ダブルデート」って言うのだろうか。
 でも、ダブルどころか、ワンペアもできていないから、言わないのか。
 そういう話には、やっぱり自分は、うといな。
 そんなことを考えながら、僕はみんなには見えないところで、こっそり肩をすくめた。

<第6章へつづく>

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